遺言書がない場合の相続登記手続
遺言書がある場合とない場合では相続登記をするために必要な書類が異なります。
遺言書がない場合の相続登記手続きは、一般的に下記のようになります。
①被相続人(亡くなった人)の出生から死亡までの戸籍謄本を取得する
婚姻、転籍、分家、法律の改正などがあると、新しく戸籍が作られます。
古い戸籍は、「除籍」や「改製原戸籍」と呼ばれ、時系列に沿っていくつもある人がほとんどです。
これは相続関係を証明するための書類なので、子がおらず直系尊属(父母、祖父母など)も既に他界していて兄弟姉妹(甥姪)が相続人になる場合は、兄弟姉妹を探すために両親の出生まで遡ります。
実際には、保管期限が切れていたり戦争で焼失していたりで出生までは遡れないことも多いですが、取れるところまで謄本を取りますので、かなりの数になります。
②相続人全員の現在の戸籍謄抄本を取得する
相続人が相続発生時に存在していたことを証明するための書類なので、被相続人が亡くなった日以後に取得したものが必要です。
③遺産分割協議書を作成する
法定相続分で相続登記をする場合は不要ですが、法定相続分とは異なる割合で相続登記をするときは、相続人全員で協議をして、どの不動産を誰がどの割合で相続するかを決め、遺産分割協議書を作成します。
遺産分割協議書には、相続人全員が実印で捺印し、印鑑証明書を添付します。この印鑑証明書は、取得から3か月以内のものでなくても構いません。
④対象不動産を取得する相続人全員の住民票を取得する
新しい登記名義人の正確な住所を証明するための書類ですので、印鑑証明書や戸籍の附票でも代用できます。
⑤被相続人の死亡の記載のある、住民票又は戸籍の附票を取得する
住民票の場合は本籍地の記載のあるものを取得します。
登記情報に記録されている登記名義人の住所と、被相続人の最後の住所が一致していることを確認するための書類です。
⑥登記申請書を作成する
法務局のホームページに書式と記載例が掲載されています。
正確に作成するために、法務局で対象不動産の全部事項証明書(登記簿謄本)を取得し、最新の登記情報を確認します。
⑦登録免許税を納める
登録免許税の額は、原則として対象不動産の固定資産評価額の1000分の4です(細かい計算方法がありますが、ここでは割愛します)。
登記官が固定資産評価額を確認できるよう、当該年度の固定資産税の納税通知書のコピー等を添付します(福岡の場合です。法務局によって取り扱いが異なります)。
登録免許税の納付方法はいくつかありますが、法務局の印紙売り場で額面の収入印紙を買い、登記申請書の最後に貼り付けるのがいちばん簡単だと思います。
⑧不動産の管轄法務局に登記申請書と添付書類を提出する
上記⑥⑦で作成した登記申請書に、①~⑤の書類を添えて法務局の不動産登記申請の窓口に提出します。
不動産の所在地によって管轄の法務局が決まっていて、管轄外の法務局に申請すると却下(取下げ)になります。
管轄は、法務局のホームページ等で確認できます。
⑨法務局で完了書類を受け取る
法務局内の処理が終わったら、法務局の窓口で登記識別情報通知(いわゆる「権利証」)や登記完了証などを受け取ります。
法務局内の処理は即日ではなく、少し日数がかかります。
法務局の混雑具合によりますが、2~3日で完了することもありますし、2週間くらいかかることもあります。
また、提出した書類に不備があると補正が必要になり、さらに時間がかかります。
司法書士にお任せください!
相続登記の難易度は様々
細かい注意点は他にも多々ありますが、ざっとこんな感じです。
住民票や印鑑証明書は住民票がある市役所や区役所、戸籍関係は本籍地の市役所や区役所で取得できます。
ただし、除籍や改製原戸籍は当時の本籍地の役所で取得することになるので、複数の役所で取得しなければならないこともあります。
相続登記の難易度は、ケースによってさまざまです。
自宅不動産のみ、被相続人の本籍地がずっと同じ市町村、子が相続人になる、相続発生からあまり年数が経っていない、という条件を兼ね備えたケースは比較的難易度が低いと思います。
しかし、このようなケースでも、登記申請書をいきなり提出するのではなく、上記の書類をできるだけ持参して、まずは法務局の相談窓口に行くことをおすすめします。
司法書士は手続きを代理で行うことができます
司法書士に依頼すると、上記の手続きのうち、印鑑証明書の取得と実印の捺印以外はほぼ司法書士ができます。
委任状への捺印や本人確認資料(免許証等)の提示、打ち合わせは必要になりますが、時間と労力はかなり軽減できます。
上記の手続きを全部自分でやるのはちょっと大変だな…と思ったら、司法書士に相談してみてください。