昨日、旧大名小学校にある福岡市スタートアップカフェの相談員をしてきました!

ここは起業のための準備や相談ができるところで、毎週木曜日は司法書士などの専門家に無料で相談できるコーナーが設けられています。

そもそも法人とは

起業するときによく悩みの種となるのが、個人でやるか法人(会社など)を作るか、ということです。

必要となる費用や税金面、取引に関する信用など、いろいろと検討項目はありますが、今回は、そもそも法人とは何か、ということに焦点をあててみます。

事業をする中で、物を所有したり、お金を借りたり、取引先に対して責任を負ったり、従業員を雇ったり…様々な権利を有し義務を負うすることになります。

法律用語で、権利を有し義務を負うことができる能力のことを権利能力といい、人であれば誰もが生まれたときから権利能力があります(民法第3条)。

逆にいえば、人でなければ権利能力はないということになります。

たとえば、猫には権利能力がないので、猫に全財産を遺贈するという内容の遺言に法的な効力はありません。

これは、猫が財産を管理できないからではなく、猫が財産を所有すること自体、法律上できないからです。

しかし民法では、人以外にも権利能力を認めています。

それが、法人です。

民法第33条第1項
法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ成立しない。
民法第34条
法人は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。

つまり法人とは、法律によって権利能力が与えられた存在、といえるでしょう。

法人として権利能力があることを、「法人格がある」といったりします。

法人の種類

法人には、社団と財団という2種類があります。

社団:「人の集まりに法人格が与えられたもの」

財団:「財産の集まりに法人格が与えられたもの」

社団の代表例は、会社法による法人、会社です。

会社法第3条
会社は、法人とする。

とっても簡潔な条文ですが、民法第34条を組み合わせることで「会社は、法令の規定に従い、定款その他の基本約款で定められた目的の範囲内において、権利を有し、義務を負う。」と読むことができます。

財団については…長くなるので割愛します。また機会があれば書きますね。

会社が「権利を有し、義務を負う」とは

株式会社の場合

会社には、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社、という4つの種類がありますが、最も身近な株式会社を例に、会社が「権利を有し、義務を負う」の意味を考えてみます。

株式会社は、会社に出資をした株主の集まりに法人格が与えられた社団です。

株式会社の最高の意思決定機関は株主総会で、誰を取締役にするとか、定款を変更するとか、会社にとって重要なことを決めるのに、原則として株主総会の決議が必要です。

一般的に社長と呼ばれる株式会社の経営者は、会社法でいう代表取締役の立場にあります。

代表取締役は、株主から頼まれて、会社を代表して業務を行っているという建前です。

小さな会社では、代表取締役が株式の全てを所有していて、会社の意思決定も業務執行も株主兼代表取締役がひとりで行っている、というところも珍しくはないです。

株主や代表取締役は株式会社にとって欠かせない存在ですが、会社が有する権利や、会社が負う義務は、会社自身のものです。

株主のものでも代表取締役のものでもありません。

具体的には

たとえば、会社の所有している不動産は、株主のものでも代表取締役のものでもなく、会社の不動産です。

当然、その不動産を売却すれば、その売買代金も会社のものです。

同様に、会社が負っている借金は、株主のものでもなく代表取締役のものでもなく、会社の借金です。

その借金が返せなくなったからといって、株主や代表取締役が個人の財産で返済する義務を負うものではありません。

(中小企業の場合は、会社が借り入れをする際に代表取締役が個人として連帯保証人になっていて、結果として代表取締役が個人として返済義務を負うことが多いようです。また、法人の種類によっては社団の構成員が個人の財産において無限に責任を負うこともあります。)

個人との比較

つまり、会社などの法人として事業を行うと、それに伴って発生する権利や義務は、出資者や経営者個人にではなく法人に帰属するということになります。

ここから導き出されるポイントは、以下の2つです。

①事業に関する権利や義務を個人から切り離せる

個人で事業を行うと、事業に関する権利や義務も、プライベートの権利や義務も、いっしょくたになってしまいます。

この点、法人の場合は、個人からは切り離された主体として法人が権利や義務を引き受けるので、明確に区別することができます。

②法人は継続する

人はいつか死んでしまいますが、法人は死にません(解散や合併等でなくなることはあります)。

出資者や経営者が交代しても、法人は事業についての権利を有し義務を負ったまま継続します。

最後に

今回ここでご説明したことは、事業を個人でやるか法人を作るかの判断の決め手になることはないと思います。

でも、その前提となる知識なので、頭の片隅に入れておいてもらえたら嬉しいです。