現行の相続手続きでは、金融機関での預金払戻しや相続登記申請などの都度、亡くなられた方(被相続人)の相続関係を証明するために、原則として、被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍関係書類(戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍など)の提出が求められています。

この「出生から死亡までのすべての」というのが、実はなかなか大変なのです。

戸籍は、法改正や結婚、転籍などによって新しいものが作られますので、平均寿命ほどで亡くなった方であれば、少なくても5種類くらいの戸籍関係書類が必要です。

養子縁組や転籍などをされていれば、もっと多くなることも珍しくありません。

戸籍関係書類だけで、冊子が一つできてしまうほど量になります。

平成29年5月29日から始まる新しい制度、「法定相続情報証明制度」では、戸籍関係書類と、相続関係を表す「法定相続情報一覧図」を法務局に提出すると、(「法定相続情報一覧図」は、相続に関係のある人の家系図のようなもの)登記官が「法定相続情報一覧図の写し」という証明書を発行してくれて、各種相続手続きの際に「法定相続情報一覧図の写し」を提出すれば、戸籍関係書類の提出を省略してもよいことになる予定です。

戸籍謄本もタダではありませんから、今までは戸籍関係書類を1冊だけ用意して、提出先で原本を返してもらってから次の提出先に行く、という方法が主流だったので、全ての相続手続きが完了するのに時間がかかりました。

しかし、「法定相続情報一覧図の写し」は交付手数料が無料で、各種相続手続きに必要な通数を交付してもらえます。

特に提出先が多い場合には、手続きにかかる時間の短縮が期待されます。

新しく始まる制度なので、運用が始まってから変更などあるかもしれませんが、相続手続きがスムーズにいくように積極的に利用していきたいものです。